まさかのフランス

結婚したのがフランス人だった…フランス奮闘生活日記

小銭乞いの青年にマックをおごる

私が住む超地方の街でも、パン屋やスーパーの前でよく「小銭をちょうだい」と声をかけてくる人がいる。声を掛けてこなくても、地面に座って、紙コップやら小さなトレイやらを前に置いていれば、すぐに物乞いの人だなと分かる。

 

物乞いという言葉は、フランスではなんだかしっくりこないんだけど、、、。

路上に住んでいるわけではなく、何かしら住む場所はあるんではないかと思うから、ホームレスというのも違う。

ぴったりな言葉がないのでひとまず物乞いの人という風に言っておこうか。

 

昨日、こんなことがあった。

仕事でいつもより朝が早かったこともあってか、私の頭はとっても疲れていた。なんだか、脳に霧がかかったような、重いような、頭が回らず思考が遅い。

ちょっと出かけるかと、近くのスーパーに買い物に出た。

 

スーパーを出たとき、背が高くすらっとした黒人男性の姿が目に入った。買い物バッグを肩にかけてさっさと通り過ぎると、後ろから「Execusez-moi, madame!」と繰り返し叫ぶ声が聞こえた。あぁ、あの黒人の人が小銭物乞いをしているのかなぁと、見ないまでも想像できた。何度もexecusez-moiを繰り返している。

あれ、もしかして私?

と思ったけれど、かなり疲れていたので、スミマセンと思いつつ気づかないふりをして車に向かった。

 

するとなんと、その青年が車まで追いかけてきた。

こんなことは初めてだったけど、脳が疲れていると反応も鈍るらしく、びっくりもせずぼうーっと青年に対面。

「そこのマクドナルドで食べたいのでヘルプしてくれませんか」と言う青年。ジャージにスニーカー、リュックという姿。

その彼に対し私は、なぜか、「一緒に行こうか?」と言っていた。

てくてく歩きだすと、「えーっと、僕1ユーロ持ってるんだけど・・・」と言う青年。そこで、あ、そっか、小銭あげればいいのかと思い、財布にあった2ユーロを取り出す私。同時になぜか、「これじゃあ足りないよね?」と質問。「足りません」という青年。また二人でマックに向かう。私がカードで払う気だと分かったのだろう、「この1ユーロもらってください」と言うのをお断りして、すぐそこのマックに向かう。

 

フランスのマックは、入ったところにある大型タッチパネルで注文をする。

「何が食べたいの?」と私。

「えーっと、僕いつも5ユーロのセット食べるんです」と青年。彼がタッチパネルで操作。

私はカードでピッと支払いをして、「良い一日を」と言って立ち去った。「ありがとうございます」と繰り返す青年の声が背後に聞こえる。

マックを出ながら、何やってんだ私と思いつつも、誰かを少し助けられたんだからいいか~と、ビーサンをひきずって車に向かった。

 

でも同時に、マックを出た瞬間、「車あるよね?」と一瞬だけ不安がよぎった。複数人のチームでの犯罪ってよく聞くから、それを思い出したのだ。
車の中では、一緒にマックに行っておごるなんて私なにやってんだろうな、手元にあるだけの2ユーロを渡すので十分だったはずでしょ、話しかけられたときもっとなんか違う返しあったでしょう、それにしても車まで追いかけてくるなんてすごいな、なんて、回らない頭で考えた。

 

帰ってこの出来事を話すと、オットにも気を付けないとダメだよと何度も言われた。優しそうな(気の緩んでいそうな)アジア人女性はターゲットになりやすいだろうから、と。ここは日本じゃないんだよ、と。

その通りだ・・・。途上国に10年住んでいた私だが、ヨーロッパに住むのは初めて。フランスもパリではなく田舎町ということで、完全に無防備の生活だ。携帯も財布も、丸見えの状態でポケットに入れてることもよくある。

 

気をつけよう、と反省する一方、物乞いの人への接し方をどうしようか、その方が私の中で大きな問題。こういうのは、その場でとっさに判断できなかったりするので、自分のポリシーを持っておくのが正解だと思っている。

これまでの私のポリシーは、小銭があれば最大2ユーロまであげる。ジャンキーっぽかったり近づきにくい人は避ける。パン屋やスーパーの前に座っている人にはパンやお菓子をあげる。というものだった。

今回のように車まで来て面と向かって頼まれるケースがもし今後またあった場合は、小銭があればそれを渡すようにしようかな。一緒に行ったりはしないで(苦笑)。

それかそもそももう、お金はあげないポリシーにしてしまおうか。

フランスという国での立ち振る舞いに悩むのは、フランス社会の構造や文化、現実をまだよく理解していないからなんだろうなとも思う。